サブリースを含む管理会社のM&Aでは、オーナーから受け取る管理料と、物件を借り上げて入居者へ貸す事業の収入を分けて確認します。同じ管理戸数でも、空室時に誰が損失を負担するかによって必要な資金と承継後の収益が変わります。
借上契約と入居者の契約を一組で読む
国土交通省は、オーナーとのマスターリース契約と、入居者との転貸借契約を区別しています。また、特定賃貸借契約について、契約前の説明や書面交付などの規制を案内しています。契約書だけでなく、実際に説明した資料、変更合意、オーナーへの報告記録まで確認することが出発点です。制度の範囲は国土交通省のサブリース解説を参照してください。
借上賃料の改定可能日と転貸賃料の改定時期が一致するとは限りません。減額交渉中の物件や解約通知を受けた物件は、合意済みの条件と希望条件を分けて収支に反映します。「将来見直せるはず」という想定だけで利益を上積みしないことが大切です。
物件別収支表に入れる項目
| 区分 | 確認する数字・資料 |
|---|---|
| 収入 | 転貸賃料、稼働率、滞納、フリーレント、入居者から受け取る諸費用 |
| 固定支出 | 借上賃料、保証条件、免責期間、解約予告期間と違約金 |
| 変動支出 | 募集費、原状回復、設備交換、管理人員、オーナーとの費用分担 |
| 精算 | 敷金等の預り金、未払賃料、前受収益、実行日前後の負担区分 |
年間合計に加え月別推移を作り、繁忙期の募集費や退去が集中した月を説明します。自社が負担した修繕を一時的費用として除く場合も、今後繰り返す支出なのかを確かめます。預り金と自社の資金の整理は預り金・家賃送金DDで詳しく扱っています。
譲渡前の契約・運営チェックリスト
- 株式譲渡か事業譲渡かを定め、契約当事者の変更と通知・承諾条項を確認する。
- 解約、賃料改定、訴訟・苦情について、相手方の主張と現時点の合意を記録する。
- 入居者対応、設備故障、退去精算を誰が引き継ぐか、担当者と期限を置く。
- オーナーと入居者の双方について、送金先・連絡先・請求方法の変更を整理する。
- 引継ぎ後に空室が増えた場合の必要資金を、通常時と別の前提で試算する。
承継できる条件が確定してから評価に使う
例えば、借上条件の見直しについて口頭の意向しか得られていない物件は、見直し後の利益を確定収益として扱えません。現行条件、合意待ちの条件、合意に至らない場合の運営を並べると、買い手との認識差を小さくできます。契約移転の進め方は管理委託契約の引継ぎも参考にし、サブリース固有の条項や手続は弁護士・所管窓口へ個別に確認してください。
赤字物件と黒字物件を合算しすぎない
全体の差額収入が黒字でも、借上期間が長く残る赤字物件が含まれていれば、引継ぎ後の資金負担は続きます。物件ごとに現行条件の収支、改善の余地、改善に必要な費用と相手方の合意状況を並べます。売上の増減だけでなく、同じ物件の条件がどのように変化したかを追うと原因を説明しやすくなります。
新規の借上物件を増やしている会社では、取得直後の募集費や免責期間によって月次利益が振れることがあります。既存物件と新規物件の収支を分け、成長のための先行費用と恒常的な赤字を区別してください。物件一覧の更新日を固定し、検討中に契約条件が変わったときは変更履歴も共有します。
