仲介業と賃貸管理を併営する会社が管理部門だけを譲渡する場合、最初の課題は「何を渡せば、その部門が単独で動くか」を決めることです。管理料の売上だけを切り出しても、集客、契約更新、電話受付、経理を仲介部門が担っていれば、買い手側に追加の費用と作業が発生します。
部門別損益は配賦前後の両方を示す
管理報酬、更新関連収入、修繕関連収入、仲介手数料を区分し、どの部門へ帰属させたかを説明します。社員給与、店舗賃料、広告、システム、経理などの共通費は、実際の担当時間や利用状況に基づく配賦と、譲渡後に必要になる費用を別に示してください。
社長が無償で行っているオーナー訪問や家族が担う経理を除いて利益を計算すると、独立後の採算が過大になります。部門損益が未作成でも、請求書・契約・作業記録から根拠を説明できる範囲で組み立て、推計値には前提を明記します。
譲渡対象と残すものを一覧化する
| 項目 | 切り分ける内容 |
|---|---|
| 契約 | 管理委託、募集・仲介、修繕、保証会社、外注先ごとの契約当事者と業務範囲 |
| 人員 | 兼務社員の担当時間、譲渡後の所属・役割、引継ぎ期間と応援条件 |
| 店舗・設備 | 相談スペース、電話番号、看板、端末、車両、賃貸借やリースの扱い |
| 情報 | 管理台帳、募集情報、顧客履歴、データ利用目的と閲覧権限 |
| お金 | 預り金、前受管理料、未収金、未払外注費と実行日前後の精算 |
紹介による収入は約束の範囲を確認する
売り手が仲介業を継続する場合、譲渡後も入居者募集や新規管理の紹介が続くかは重要な論点です。紹介を義務付けるのか、任意の協力なのか、報酬・期間・担当窓口をどうするかを協議します。将来の紹介件数を確約していないのに、現在と同じ収入を永続的に見込まないようにします。
一時的に店舗やシステムを共用する場合も、利用料、問合せの振分け、障害時の担当、共用終了日を決めます。顧客が旧窓口へ連絡しても担当先が分かるよう、案内文と電話対応をそろえる必要があります。
実行前の確認手順
- 対象資産・契約・負債・人員の一覧を、譲渡契約の対象範囲と照合する。
- 契約移転の承諾や通知、免許・登録等の手続を担当専門家と整理する。
- 一物件を選び、家賃入金から送金、更新、修繕受付まで買い手の体制で確認する。
- 承諾未了の契約や移行できないシステムがあった場合の対応を決める。
中小M&Aガイドラインの改訂案内では、契約や支援業務の説明、最終契約のリスク対応などが重視されています。手法によって承継範囲と手続が変わるため、当事者間の合意だけで完了すると考えず、管理契約の引継ぎと預り金の確認を具体化してください。
残る仲介部門にも無理がないかを確かめる
管理部門が抜けた後、売り手側の仲介業に店舗賃料や経理費用が残る場合があります。譲渡する部門の採算だけでなく、残存事業が負担する費用を確認し、共用資源を使い続ける条件を協議します。買い手が契約を引き継げても、元の店舗の運営が急に立ち行かなくなる計画では、紹介や顧客対応の継続も不安定になります。
対象顧客の範囲を決める際は、同じオーナーが管理と仲介の両方を利用している点にも注意します。どちらの会社へ何を問い合わせればよいか、募集依頼や更新の情報をどう共有するかを決め、相手方に二重の請求や異なる説明が届かないようにします。
